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盤共に非常に状態の良いでございます。
こちらは新ミックス/本国新リマスターとなります。
制作当時の録音制作機器では成し得なかった音響の有り方を体現した感がございます。
内容はオリジナルに即しながらも音響面の向上を図ったものでかなり音質が向上しており非常に良心的。
Phil Collinsの(細やかさ含めた)演奏の有り方と安定感が判り易いものとなっております。
細部にわたり配慮が為された感があり非常に良心的でございますが、あくまでもリミックス。オリジナル版に比べ加工感がございます。
尚、紙ジャケット仕様は英国/ヨーロッパ圏初回リリース時のアナログジャケット仕様を再現した感がございます。
内容は言わずもがな。
ラインナップは初期名手揃い。
Tony Banks(Key、後にBankstatement他)、Steve Hackett(G、後にGTR)、Peter Gabriel(Vo/Flute/Per他)、
Mike Rutherford(B/12 Strings G、後にMike & the Mechanics)、Phil Collins(Ds/Per/Vo/Vibraphone、後にBrand X)となります。
ゲストにかのBrian Eno(ex-Roxy Music、Fripp & Eno他)の音響参加がございます。
プロデュースはJohn Burns(Queen、Caravan等手掛ける)とバンド自身。
1974年8月~10月英国ウェールズ州カーマーゼンシャー”Glaspant Manor”での制作となります。
前作リリース後は英国で大ヒット。米国でもチャートアクション上昇を記録。大成功への歯車が廻り始める事となります。
されど、Peter Gabrielのステージ・パフォーマンスに大きな注目が集まり「パフォーマーPeter Gabrielとそのバンド」というGenesisにとって不本意なレッテルが張られる事となります.......................
またPeter Gabrielは本来の自己とミュージシャン/パフォーマーそしてロック・スターとしての虚像の亀裂に強く悩む事となり、その経験と解消から次作はそれに基づくコンセプト作制作を示唆。
バンドGenesisとしてもそのアイデアを了承。
Led Zeppelin歴史的傑作制作で御馴染み”Headly Grunge”にて基礎創作を開始する事となります。
楽曲創作は進むものの、Peter Gabriel担当の歌詞等パートは完成せず。
他のメンバーの不満を抱えつつ英国ウェールズ州”Glaspant Manor”に録音機材一式を持ち込み、次作創作に乗り出す事となります..................................
されど、Genesisの”Peter Gabrielとそのバンド”的なイメージを嫌った他のメンバーとの軋轢や制作に対する考え方の違いが加わり、
様々な自由を欲したPeter Gabrielは制作時より脱退を考え始めていく事となります..........
さて今作。
今作はコンセプト作。
プエルトリコ人”Rael”が米国ニューヨーク”Broadway”にて奇想天外な経験をする物語ではございます。
されど、様々な出会いの中で起こる自己発見と精神世界への旅を基としている事がミソ。
本来の自分の姿と他の者が考える虚構の自己の姿との分裂と独り歩きそして葛藤、様々な経験を経て分離したもう一つの自己を取り戻す、という感のあるコンセプト作でございます。
当時Peter Gabriel自身が抱えていたロック・ミュージシャン/パフォーマーとしての自分と本来の自分とのギャップ。
その虚構の姿をファン、ビジネス面から強く求められる事に強い苦悩を感じていた事が発想の根底にございます。
前作に続きプロらしい演奏/アンサンブルと楽曲になった感のある作品でございます(音響面も含めて、でございますが..............)。
ツアーを重ねる事で演奏・アンサンブル向上が図られた事や音の抜き方を学んだ事で前作よりも遥かに音楽性の洗練化が図られておりますが、
甘美さや楽曲の詰めの甘さが姿を消し、音楽性の凝縮感が加わっている事がミソ。
また演奏/アンサンブル含めた緻密さが加わり前作よりも格段に楽曲の質が高まっており、反面、二枚組大作の割には大作主義的な楽曲が少なめというもの。
(前作同様に)以前の様な凝り固まった感覚のアナログ片面大作楽曲は姿を消し、コンパクト化が進んだ感がございます。
されど長尺楽曲の各パートに色を強く持たせ楽曲独立させた感が有り、一見単独に見えるものの繋がりを持つ継続感が窺えるものではございます。
Genesisという独特の構築性を持つ音楽性でございますが、以前の音楽性に比べると結構展開が早い楽曲が揃うもの。
また躍動感が強いもので引き締まった音楽性でも有り、今作は異色作とも初期Genesisの頂点とも評価される理由が理解出来る感がございます。
Peter Gabriel脱退が後に起きますが、Peter Gabriel/Genesisそれぞれに取って今作は「分岐点」と「(演奏面含めた)その後の基礎」という感。
Peter GabrielはGenesis脱退後二年程の休息を経て、ソロとして再登場。
その1stはGenesis色を残しつつも、ニュー・ウェイヴ色を加えた音楽性。今作の洗練度やかのBrian Enoとの邂逅が基となった感がございます。
一方Genesisはコンセプト創作者が去り、コンセプトに振り回されない音楽性を指向。
また作曲者が一人減った事でそれぞれの音楽性の範囲が広がった事で、Mike Rutherford/Phil Collinsのポピュラー性が加わっていく事となり、
セールス面で大きく成功を収めていく事となります....................................(初期全盛期Genesisは皆が作曲者であった事実.......................)
また今作では(Genesisの音楽性の礎である)名手Tony Banks/(コンセプト創作者である)名手Peter Gabrielの陰に隠れていた感が有る名手Steve Hackettの抒情性含めた様々な音楽性が表に出てきた感がございます。
前作を起点として今作大傑作”The Lamb Lies Down on a Broadway”を経て、単体個性ミュージシャンとしての音楽性を確立。
4人編成中期Genesisを(無意識的な)試行としてソロ独立を果たすという経緯が窺えるものでございます.............
制作当時は英国アート/ロック全盛期の頂点という1974年。
分野を超え様々な大作名盤やコンセプト代表作が揃うという時代でございます。
このGenesisもその大きな影響下の渦の中に居た事が窺えるものでございます.........................
今作リリース後は(二枚組コンセプト作とは言えど)以前よりも大きなヒットを記録する事となります。
チャート・アクション/ツアーも大好評となりますが、Peter Gabrielが抱えた葛藤の解消には繋がらず、更に成功から来る重圧も徐々にPeter Gabrielに加わっていく事となります........
今作のと或る楽曲に於ける卑猥な被り物パフォーマンスに他の四名が憤慨した話(某メンバー曰く「我慢の限界だった.....」)を代表に、Peter Gabrielと他のメンバーとの軋轢も深刻化。
そして作品再現初期ライヴを熟し、その後の通常セットに戻ったツアーでの米国クリーブランド公演後にて、Peter Gabrielは脱退を宣言する事となります......................
現在は入手が困難。この機会に是非。